ボールドルーラー系種牡馬の特徴は?日本競馬への影響を紹介

ボールドルーラー系

競馬において血統を調べることは重要だと言われていますが、それをしっかりと理解するのは大変です。
初心者の内は競走馬の父くらいは確認するかもしれませんが、何代も遡って調べて、それをもとに馬券を考えることはないと思います。

この記事は血統で大きな父系の一つである、ボールドルーラー系を取り上げて解説します。
ボールドルーラーの父系をさらに辿っていくと、最終的にどこに行きつくのでしょうか?

またボールドルーラー系の種牡馬はどんな特徴があって、日本競馬にどのような影響を与えたのでしょう?
競馬はブラッドスポーツとも言われています。
ボールドルーラー系を深堀して競馬の奥深さを学び、馬券戦術に繋げていきましょう。

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ボールドルーラーはどんな馬?

ボールドルーラー(引用元:YouTube)

ボールドルーラー系を深く知るために、まずはボールドルーラーそのものを紹介します。
ボールドルーラーは1954年に米国で生まれた黒鹿毛の牡馬です。

幼少期は、舌を切断寸前までの事故にあったり、転倒により脚を負傷してしまったりとたびたび不幸に見舞われました。
それらにより最悪は予後不良になるところでしたが、なんとかデビューまでこぎ着けます。

そしてデビュー前の調教でもの凄い動きを披露し、一躍評判馬となりました。
後に大種牡馬となるボールドルーラーですが、デビューできたのは度重なる不幸にも負けない強運の持ち主だったとも言えますね。

ボールドルーラーの戦績

無事にデビューを果たしたボールドルーラーは、順調に勝ち星を重ねます。
競走馬としてのボールドルーラーは2歳から4歳まで走り、戦績は33戦23勝2着4回3着2回でした。
ほぼ完璧ともいえる戦績で、米国の年度代表馬にもなっています。

当時の主戦騎手が「ボールドルーラーは私よりも競馬を良く知っていました」とコメントするほど、物静かで賢い馬だったようです。
そのためボールドルーラーは、自分で勝手にレース配分を決めて走ると言われていました。

細身の体ながら強靭な筋肉を持っていてスピードがあり、それを持続させるのが得意だったようです。
また昔だからということもありますが、3年間で33戦も走るのはすごいですね。

ボールドルーラーの父系は?

次にボールドルーラーの父系を遡ってみます。
ボールドルーラーの父はナスルーラで、ナスルーラからさらに遡っていくとダーレーアラビアンに辿り着きます。

競走馬は父系をどこまでも遡っていくと、最終的に3頭の馬に行き着きます。
この3頭を「三大始祖」と呼び、ダーレーアラビアンはその1頭です。

他の2頭はバイアリーターク、ゴドルフィンアラビアンでそれぞれに特徴があります。
そして現在のサラブレッドのほとんどが、ダーレーアラビアンの直系子孫です。

ボールドルーラーの父であるナスルーラは、激しい気性だったため競走馬としては大成しませんでした。
しかし圧倒的なスピードがあったため、種牡馬として新たな道を進むことになります。

そしてこれが記録的な大成功で、世界中にナスルーラの快速を広めていきました。
またボールドルーラーが競走馬として成功したのは、ナスルーラの気性を引き継がなかったことにあります。
スピードはしっかり受け継いだ上で、性格は物静かだったのです。

人間でも父親が精力的で社交的だと、子供は思慮深く穏やかな性格になることがありますね。
ボールドルーラーもそんな感じに、賢くいい子に育ったのではないでしょうか。

ボールドルーラーの親系統確立

競馬の血統はボールドルーラー系のように系統によって整理されていますが、親系統と呼ばれるものになるにはいくつかの条件があります。
また親系統の前に子系統になる必要がありますが、子系統の条件は以下のようになっています。

子系統の条件
  1. 確立させたい種牡馬が現役
  2. 確立させたい種牡馬の血統支配率が全世界で2%以上、もしくは所属地域で5%以上
  3. 確立させたい種牡馬の下に連なる種牡馬が4頭以上

上記の全てを満たす必要があり、自身の子の活躍も必要でけっこう大変ですね。
そしてここからさらに親系統に昇格するためには、まず以下の2つの条件が必要です。

親系統に昇格するための条件
  1. 昇格させたい系統が滅亡していない
  2. 昇格に関わる系統が滅亡していない

その上で、以下の3通りの条件のうちのどれか一つを満たす必要があります。

3通りの条件
  1. 昇格させたい系統の支配率が全世界で10%以上、もしくは所属地域で12%以上
  2. 昇格させたい系統以降3代に渡って子系統を確立している
  3. 昇格させたい系統以降以降、分岐する形で2系統確立している

こうなると圧倒的な血統支配が必要になってきますね。
ボールドルーラーは上の条件のうち、1の米国で12%以上の支配率となり親系統になりました。

ボールドルーラー系種牡馬の特徴

ボールドルーラー(引用元:YouTube)

ボールドルーラーは競争馬としても優秀でしたが、種牡馬になってさらに活躍するようになります。
種牡馬としてボールドルーラーは、米国のリーディングサイヤーに8回も輝いたのです。
ここではボールドルーラー系種牡馬の特徴について解説します。

ボールドルーラーが快速と物静かな気性で勝ってきたので、そのような特徴が子孫にも伝わったのでしょうか。
またボールドルーラー系種牡馬は、日本競馬へどのような影響を与えたのかを見ていきます。

抜群のダート適性

ボールドルーラー系の種牡馬で最も大きな特徴は、優れたダッシュ力とスピード、そして抜群のダート適性です。
米国の競馬はダートなのでそもそも適性がなければ勝てないわけですが、ダッシュ力とスピードで一気に押し切るようなものでした。

そして抜群のダート適性は、ボールドルーラーの後継種牡馬であるワットプレジャー、ラジャババなどが米国のリーディングサイヤーになっていることからもわかります。
当時の米国の短中距離ダート主流の競馬には、最も適した血統の一つだったようです。

日本競馬で活躍した馬の特徴

ダート適性が抜群のボールドルーラー系種牡馬ですが、日本ではなぜか芝で活躍する馬が多く出ました。
ステューペンダス産駒のラッキールーラが日本ダービーを、ダストコマンダー産駒のアズマハンターが皐月賞を勝っています。

これはボールドルーラー系のスピードが、90年代以降にスピード化された日本の芝に適合したからと言われています。
米国でボールドルーラー系が大活躍していく過程で様々な血が加わり、スピードを残したまま芝に合うようになってきたと考えられます。

このようにダート適性が高い系統だからといって、芝は全く走らないということはないので注意が必要ですね。

ボールドルーラー系の欠点

ここまで良いところだらけのボールドルーラー系ですが、いくつかの欠点を紹介します。
ボールドルーラー系は、早熟であり長距離に適さないという特徴があります。
そのため2歳戦では良い成績であっても、3歳になると伸び悩みました。

それはボールドルーラーの生存中に、米国三冠レースの優勝馬が1頭もいないことからもわかります。
またハイペースでは強いですが、スローペースで上がりの競馬に弱いという一面もあります。

ボールドルーラー系は長くスピードが持続するという長所がありますが、一本調子で最後の瞬発力に欠けるということが原因です。
このようなことが影響してボールドルーラー系は、ノーザンダンサー系やネイティヴダンサー系に主役の座を奪われていきます。

シアトルスルー系の特徴

シアトルスルー(引用元:JRA-VAN World)

ボールドルーラー系の主流種牡馬は、早熟や距離の壁により衰退します。
そしてこのまま系統が途切れるかと思われていたところに、シアトルスルーが生まれました。
シアトルスルーはボールドルーラー系の主流外でしたが、当初の予想をくつがえし、競走馬として大活躍しました。

ボールドルーラー系の欠点である早熟や距離の壁を克服して、無敗で米国三冠馬となったのです。
さらに種牡馬になっても活躍を続け、現在シアトルスルー系はボールドルーラー系で最も活力のある系統となっています。

ボールドルーラーから受け継いだもの

シアトルスルーは競走馬として米国GⅠを8勝しますが、持ち前のダッシュ力とスピードで逃げる戦法を得意としていました。
普段は物靜かですが、レース前になると闘志をむき出しにしていたようです。

そんなことからシアトルスルーは、ボールドルーラーから物静かで賢いところ、ナスルーラから荒々しさを受け継ぎ、それが上手くレースに活かされたと考えられます。
一方シアトルスルーの母はマイチャーマーで、競走成績は32戦6勝でした。

当時はあまり注目されていませんでしたが、この牝系子孫は後に多くの活躍馬を輩出します。
シアトルスルーの父ボールドリーズニングも、当時は期待されていない種牡馬でした。

そしてこの2頭の掛け合わせでとんでもない名馬が誕生するのですから、血統は奥が深く、またとても難しいですね。
シアトルスルー系は、ボールドルーラー系に足りなかったスタミナと成長力を補い、大きな活躍を続けていったのです。

シアトルスルー系の日本活躍馬

シアトルスルー系は日本でも活躍する馬を輩出しました。
シアトルスルーの子であるダンツシアトルとダイキブリザードは、それぞれGⅠを勝っています。

ダンツシアトルの戦績は14戦8勝、最後のレースとなった宝塚記念を勝ちGⅠ馬となりました。
デビューから2戦はダートを使って連勝、その後芝のレースで距離も延長しましたが、重賞では勝てませんでした。

それが最後の2戦でGⅢ・GⅠと連勝するのですから、成長力があったということでしょう。
このあたりを見るとボールドルーラー系の早熟という欠点は、シアトルスルーの長所で完全にカバーしていると言えますね。

一方のタイキブリザードは23戦6勝、GⅠの安田記念を勝っています。
6勝全てが2000m以下で、宝塚記念や有馬記念は惜しくも勝てませんでした。

しかし負けたと言っても2着3着には来ているので、距離の壁が影響したかどうかは微妙です。
ボールドルーラー系の距離の壁が、少しだけ影響したのかもしれませんね。

母父で能力開花

母父で能力開花

ボールドルーラー系はシアトルスルーの活躍によって、父系を継承することができました。
しかしボールドルーラー系は母の父になった時に、より能力が開花し多くの活躍馬が出たのです。

競馬の血統で競走馬は父に一番影響を受けるとされていますが、母の父も大きな影響があると考えられています。
ボールドルーラー系の母父としての活躍を見ていきます。

サンデーサイレンスとの相性

サンデーサイレンス(引用元:JRA-VAN World)

ボールドルーラー系は母父となってサンデーサイレンスと繁殖すると相性が良く、多くの活躍馬が生まれました。
ボールドルーラー系が母父となり、サンデーサイレンスと繁殖する流れを追ってみます。

まずボールドルーラーの子供であるラジャババから、ロイヤルスキーが生まれます。
そしてロイヤルスキーは、牝馬のアグネスフローラを輩出します
アグネスフローラの戦績は6戦5勝、桜花賞を勝ってGⅠ馬となりました。

その後繁殖牝馬となったアグネスフローラはサンデーサイレンスとの繁殖により、アグネスフライト、アグネスタキオンを産出します。
一方ラジャババの子ウエルデコレイテッドは、エアシャカールの母父となりました。

さらにボールドルーラーの子ワットラックは、ジェニュインの母父です。
エアシャカール・ジェニュインの父もサンデーサイレンスですから、ボールドルーラー系が母父となった時の相性はとても良いといえますね。

母父で活躍した日本馬

アグネスタキオン(引用元:JRA-VAN)

ボールドルーラー系が母父で、サンデーサイレンスが父である日本馬は、GⅠを勝つほどの活躍をしました。
アグネスフライトはダービーを、アグネスタキオン・エアシャカール・ジェニュインは皐月賞を勝っています。

この中でもアグネスタキオンの戦績は、4戦4勝と突出していました。
アグネスタキオンは2戦目のラジオたんぱ杯3歳Sで、早仕掛けながらも最速の上がりで1着となりました。。
これを見た他の陣営はアグネスタキオンとの直接対決を避けたため、3戦目の弥生賞は出走頭数がわずか8頭でした。

ここまで余裕の3連勝で迎えた皐月賞は、1.3倍の圧倒的1番人気の中、ここでも余裕をもって勝利しました。
そして三冠獲得へと期待された矢先、屈腱炎を発症し残念ながら引退となったのです。

日本競馬史上最強馬になる可能性もあったアグネスタキオンですが、あまりに早い引退が惜しまれます。
しかしアグネスタキオンは種牡馬となり、その血はダイワスカーレットなどの快速馬に引き継がれていきました。

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まとめ

この記事はボールドルーラー系種牡馬の特徴について解説してきました。
この記事をまとめると次のようになります。

ボールドルーラー系種牡馬の特徴まとめ
・ボールドルーラーは米国で競走馬として優秀な成績を収めた
・ボールドルーラーの父はナスルーラでダーレーアラビアンに辿り着く
・ボールドルーラーは米国で12%の支配率で親系統になる
・ボールドルーラー系種牡馬の特徴はダート適性とダッシュ力・スピードがあること
・ボールドルーラー系種牡馬の欠点は早熟で距離の壁があること
・ボールドルーラー系は主流外のシアトルスルー系が発展
・シアトルスルーは米国三冠馬となり、種牡馬としても大活躍
・ボールドルーラー系は母父の時に能力開花
・ボールドルーラー系は母父でサンデーサイレンスとの相性が良い

早熟で距離の壁があるボールドルーラー系種牡馬が活躍できたのは、米国が2歳戦と短距離戦に力を入れていたからと言われています。
武器であるダッシュ力とスピードで、押し切るような競馬だったようです。

中距離以上のレースではそれだけではだめで、スタミナと共に瞬発力も必要になります。
そしてそれを克服したのが、ボールドルーラー系の主流外のシアトルスルーでした。

シアトルスルーは全く見栄えのしない馬で、落札額も安いものでした。
それがGⅠ8勝、種牡馬としても大成功するのですから競馬はおもしろいですよね。

そしてシアトルスルー系は、今でも直系が米国の主流血統となっています。
ボールドルーラー系はシアトルスルー系によって、その良血が引き継がれていきます。